店主の購書記:7月4週

  1. レヴィナス/ポワリエ『暴力と聖性』(内田樹訳・国文社)
  2. メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(芹澤恵訳・新潮文庫)
  3. 秋月龍珉『公案—実践的禅入門』(ちくま学芸文庫)
  4. ウェブスター『あしながおじさん』(土屋京子訳・光文社古典新訳文庫)
  5. ユリイカの橋本治特集号
  6. 『アーネスト・ダウンスン作品集』(岩波文庫)
  7. ロバート・E・ハワード「新訂版コナン全集1、2巻」(創元推理文庫)
  8. 『怪奇小説傑作集(3)』(創元推理文庫)
  9. 清岡卓行『海の瞳 原口銃三を求めて』(文春文庫)

(1)京都の町家古本はんのきにて。
 閉店セールで半額でした。元々それほど高い値付けでもないうえに半額だったので、申し訳ないような値段で買いました。恐縮です。
 閉店まであと二日という時に行きましたが、まだまだいい本がたくさんあったので、新しいお店が決まった時にはまたお邪魔したいです。

(2)京都は四条河原町のブックオフにて。
『フランケンシュタイン』は、ごく最近まで読んだことがなくて、この新潮文庫の新しい翻訳が出てしばらくした時に、初めて読みました。
 昔の小説だし、そんなに面白くもないかもしれないと思いつつ読みましたが、予想外に面白かったです。

(3)京都は三条のブックオフにて。
 以前持っていたけれど売ってしまったので再購入。
 絶版状態でアマゾンでは若干プレミア価格になっているようです。
 禅、やってみようと思ったことはあるけれど、煩悩まみれなので、どうも無理みたい。

(4)枚方の呼文堂にて。
  帯に「女子だけが知っていた名作。(男子も読んでね!)」とあり。
 男子って年じゃないけど読んでみようと思います。

(5)天神橋筋商店街の駄楽屋書房にて。
 橋本治は、エッセイや評論のたぐいはいろいろ読んできたけれど、小説はほとんど読んでいません。
 いずれ小説も読まなきゃなと思っていたので、この本にある主要著作解題を参考にこれからいろいろ手にしてみようと思いました。

(6)天神橋筋商店街の天牛書店にて。
 最近南條竹則さんが紹介する翻訳物をちらほら集めてます。
 先週買ったロセッティも南條竹則編訳でした。 

(7)天神橋筋商店街の栞書房にて。
 帯付で状態のいいものがお手頃価格だったので、すでに持っているにも関わらず買ってしまいました。
 現在手元にないのは第3巻だけなので、最近どこの本屋に行っても3巻を探すのですが、新刊書店でも古本屋でも見つかりません。

(8)天神橋筋商店街のジグソーハウスにて。
 若島正さんが『乱視読者の英米短篇講義』で「この世に存在するすべての短篇の中でわたしが最も偏愛する短篇であり、できることならわたしが書いたことにしてしまいたいくらい愛している」というコッパードの「アダムとイヴとツネッテ」が入っている短編集。
 若島さんがそこまで言う短編小説はいずれ読まねばと思っていて、ようやく入手しました。

(9)天神橋筋商店街の矢野書房にて。
 先日矢野書房店主の矢野さんから頂いた本、伊達得夫『詩人たち—ユリイカ抄—』の最初のエッセイが原口銃三の話で始まっていて、これは友人であった清岡卓行による原口銃三についての本。
 それを矢野さんのお店で買いました。


 今週は天神橋筋商店街の古本屋を訪ねました。
 天神祭の宵の日で、人がいっぱいでした。
 本屋さんもいつもよりお客さんが多かったんでしょうか。あんまり関係なかったんでしょうか。下世話ですけど、ちょっと聞いてみたい。

店主の購書記:7月3週

  1. ラブクラフト『文学における超自然の恐怖』(大瀧啓裕訳・学研)
  2. 井波律子『読切り三国志』(ちくま文庫)
  3. 井上究一郎訳『セヴィニェ夫人手紙抄』(岩波文庫)
  4. 南條竹則・松村伸一編訳『D.G.ロセッティ作品集』(南條竹則/松村伸一編訳・岩波文庫)
  5. 藤田嗣治『随筆集地を泳ぐ』(平凡社ライブラリー)
  6. バルザック『グランド・ブルテーシュ奇譚』(宮下志朗訳・光文社古典新訳文庫)

(1)守口ジャガータウンのブックオフにて。
  ラブクラフト。最近はぜんぜん読んでいないけれど、若い頃好きでした。それで、創元推理文庫のラブクラフト全集はできるだけ揃えて持っていようと思っています。とはいえ、リアル古書店で欠けている巻を見つけたら買っておくというやり方なので、一度欠けた巻が出るとなかなか揃いません。現在3巻を欠いてます。
 こういう本が出ているの、知りませんでした。安くもなかったので買うかどうか迷いましたが、作品解題を読むと欲しくなり、思い切って購入しました。

(2)同じく守口ジャガータウンのブックオフにて。
 三国志って、いろいろな本で読もうとしてきたのだけれど、一度も最後まで通読したことがありません。羅貫中の『三国志演義』はもちろんのこと、吉川英治や柴田錬三郎や北方謙三でも最後まで読めませんでした。横山光輝の漫画でも、最後までは読んでいません。
 とりあえずこの本を読んで、三国志の全体像を掴んだうえで、また再度どれかに挑戦してみようかなと思い、この本を買ってみました。
 この本さえ読了できないかもしれないけれど。

(3)同じく守口ジャガータウンのブックオフにて。
 セヴィニェ夫人(1625-1696)の手紙。『失われた時を求めて』翻訳者の井上究一郎の翻訳。『失われた時を求めて』の主人公の祖母がセヴィニェ夫人の手紙の愛読者であったという設定があり。
 附記で、『續セヴィニェ夫人手紙抄』について触れているけれど、その本は出ているのかなぁ?

(4)京橋のブックオフにて。
 わりと最近(今年の3月)出たばかりの本なので確保しました。
 ロセッティはこういう絵を描く19世紀の画家で、そして詩人でもありました。

(5)同じく京橋のブックオフにて。
 今度は日本の画家の随筆集。
 戦時中やその直後に書かれたものが多いけれど、あまり悲壮感などあるように読めない。
 戦争状態が日常になると、人は案外その状況に慣れたりするのかなぁ、などと思ったり。
 戦争嫌ですけど。 

(6)たにまち月いち古書即売会にて。
 光文社古典新訳文庫は時々変化球を投げてくることがあって、そうした変化球のうちの一つは、長編作家と思われている作家の短編集を出すというやつで、最近ではゾラの短編集が出ていました。そしてこれはバルザックの短編集。
 かつて普通に新刊で買って、全部読まないうちに売ってしまい、再度手に入るチャンスがあればいつでも買うつもりでいたところ、たにまち月いち古書即売会で格安で売っていたので購入しました。厚生書店さんのところで売っておりました。


 平均すると一日一冊以上のペースで買っているけれど、一日一冊以上のペースで読んでいるわけではないので、積ん読本がどんどんたまります。

 どうしたって買う量の方が読める量より多くはなるだろうけれども、もうちょっと本を読む時間を作りたい。 

店主の購書記:7月2週

  1. デイヴィッド・ロッジ『小説の技巧』(柴田元幸/斎藤兆史訳・白水社)
  2. リルケ『フィレンツェだより』(森有正訳・ちくま文庫)
  3. モーム『サミング・アップ』(行方昭夫訳・岩波文庫)
  4. エリオット『荒地』(岩崎宗治訳・岩波文庫)
  5. ドノーソ『三つのブルジョワ物語』(木村榮一訳・集英社文庫)
  6. 斎藤環『キャラクター精神分析』(ちくま文庫)
  7. 黒田龍之介『ポケットに外国語を』(ちくま文庫)

 (1)心斎橋のブックオフにて。
 心斎橋のブックオフには、だいぶ前からこの本があったのだけれど、安くもなかったのでずっとスルーしてきていたのが、このたびついに安くなっていたので購入。

(2)同じく心斎橋のブックオフにて。
  リルケが22、3歳の時に、ルー・サロメに宛てて書いた旅日記で、リルケの死後20年くらいしてから刊行されたものの、森有正による翻訳(仏訳からの重訳)。
 ルー・サロメはニーチェから求婚されたこともある女性で、ニーチェ書簡集にもルー・サロメ宛ての手紙が収録されています。読んでいるとだんだんつらくなってくるような手紙です。ニーチェの書簡は、ちくま学芸文庫のニーチェ全集別巻で手に入ります。

(3)同じく心斎橋のブックオフにて。
 モームの本は時々買ってちょっとずつ増やしています。商売柄売ることもあって、増えたり減ったりなんですが。買ってすぐ読むわけでもなく、いずれ「そういう気分」になったら集中して読もうかな、なんて思いつつ。

(4)同じく心斎橋のブックオフにて。
 最近何か読んでいる時に、エリオットの荒地の中の雨の使い方のことが書いてあって、それを確認しようかなと思い購入。

(5)古川橋のブックオフにて。
 この日はこの本を見つけて浮かれてしまい、この後、普段なら買わないだろうという本も買ってしまいました。

(6)同じく古川橋のブックオフにて。
『戦闘美少女の精神分析』の単行本が出た頃は、まだわりとゲームやアニメのことも分かっていたので、すぐ読んで「なるほどー」とか思っていたのだけれど、最近はその手のものにあまり親しんでいないので、この本を読んでももはやついていけないかもしれないと思いつつ購入。

(7)同じく古川橋のブックオフにて。
 最近長編小説をじっくり読んでいる時間もなかなか取れないので、もっぱら短い小説のほか、随筆のたぐいばかり読んでいて、しかも、随筆集一冊丸々読むわけではなく、自分が好きそうな話題の随筆だけを選んで読むということをしてます。
 この本は外国語に関するエッセイ集といったおもむきで、それだったらほとんどみんな興味を持てそうということで購入。


 今週は新刊本屋では本を買わず。古本屋もブックオフ二軒覗いたきり。

 古川橋のブックオフは、古本の業者市の帰りの道すがらにあるので毎週のように覗いてます。ここか、たまに守口の方のブックオフを。

 まだまだ新刊書店で手に入るような本を古本屋で買いましたって公言するのは、著者や出版や流通に関わっている方々なんかに申し訳ない気がして気が引けるのですが、当方貧乏なので許してください。

 貧乏ならそんなに本を買わなくてもいいんじゃないの? という気がしないでもないですが。

店主の購書記:7月1週

  1. 井上究一郎『水無瀬川』(筑摩書房)
  2. 石川淳『石川淳評論集』(ちくま文庫)
  3. 芳川泰久『書斎のトリコロール』(自由国民社)
  4. 『東欧SF傑作集(下)』(創元SF文庫)
  5. H.G.ウェルズ『解放された世界』(浜野輝訳・岩波文庫)
  6. 鈴木道彦『フランス文学者の誕生 マラルメへの旅』(筑摩書房)
  7. M.ミオー&J.ランジュ『娘たちの学校』(菅原孝雄訳・ペヨトル工房)
  8. モーム『劇場』(龍口直太朗訳・新潮文庫)

(1)難波はエキモの天牛堺書店にて。
 井上究一郎はプルースト『失われた時を求めて』の個人全訳を日本で一番最初にやったフランス文学者。『水無瀬川』は1994年に出た自選エッセー集。

(2)難波の望月書店にて。
 ちくま文庫の石川淳コレクションは短篇小説選、長篇小説選とこの評論選の三冊出ていますが、現在すべて絶版状態のようです。

(3)難波は古書センターの山羊ブックスにて。
 山羊ブックスさんでは欲しい本がいっぱいあったのだけれど、どれもこれも買うわけにいかず、三冊だけ。そのうちの一冊がこれ。
 芳川泰久さんは、最近新潮社からプルースト関連本二冊と、ボヴァリー夫人の新訳を立て続けに刊行されてました。僕はそのうち二冊は新刊で購入。
 この本は、その芳川さんが1994年に出した本で、たくさんのフランス小説(303 romans français d’aujourd’hui と書いてある)の書評集といった趣きの本。

(4)なかもずの天牛堺書店にて。
 ブックオフやなんかではあまり見ないなと思ったので買ってみた。案の定絶版本だった。
 上巻も一緒にあればよかったのだけれど、短篇集なのでさしあたり下巻だけでも。

(5)同じく天牛堺書店にて。
 岩波の赤帯は、持っていないものを見かけたらとにかく買う、というくらいの勢いで買ってます。
 これは持っていませんでした。

(6)泉ヶ丘の紀伊國屋書店にて。
 鈴木道彦さんは、『失われた時を求めて』の個人全訳を日本で二番目にやったフランス文学者。
 で、その鈴木道彦さんのお父さんが鈴木信太郎で、これはその鈴木信太郎の伝記です。
 今週唯一買った新刊本で、買った翌日に読了しました。
 フランス文学者の伝記ってどうもすごく好きみたい。辰野隆の伝記を読んだ時もすごく楽しくて、そのあと辰野隆随想全集を買って全部読んだりしました。
 当然今は鈴木信太郎全集が欲しくなっています。市に出てこないかな。

(7)千林のブックマートにて。
 17世紀フランスの好色文学。
 とくに好色文学好きというわけではないのだけれど、こういう時代のこういう小説はそんなにないと思うので、とりあえず確保。

(8)森小路のキーツ・アンド・カンパニーにて。
 千林には市があるため毎週通っているのだけれど、その隣の森小路には滅多に立ち寄らないので、この古本屋さんに来るのも、ものすごく久しぶり。
 最近モームの『人間の絆』を読んでいて面白かったのでこれも買ってみました。
『人間の絆』 、まだ読了してないんだけど。


 鈴木信太郎の伝記が面白かったです。
 鈴木家は戦前は相当の資産家で、鈴木信太郎は、自分で稼ぐお金だけではとても買えないようなフランスの本を尋常じゃないくらい買い集めていたそうです。
 さらに、何があっても焼けたりやなんかしないようにと、鉄筋コンクリートで書庫を建てて、蔵書はそこに保管して、おかげで、戦争で家は焼けたけれど書庫や蔵書は無事だったという。
 その書庫の建物は、最近豊島区に寄贈されたそうです。 蔵書の方は獨協大学に寄贈されているそうです。

 現代でも、ものすごい資産家の息子か資産家本人が文学に没頭して、金に糸目をつけずに本を集めている、というようなことはないのかなぁと夢想します。
 いたらお知り合いになりたい。

店主の購書記:2015年6月4週目

  1. チェーホフ『馬のような名字 チェーホフ傑作選』(浦雅春訳・河出文庫)
  2. 神品芳夫『新版リルケ研究』(小沢書店)
  3. ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ(下)』(岩波文庫)
  4. ナボコフ『ロリータ』(若島正訳・新潮文庫)
  5. 木村敏『自己・あいだ・時間』(ちくま学芸文庫)
  6. 小谷野敦『現代文学論争』(筑摩選書)
  7. 小谷野敦『お嬢様放浪記』(猫猫塾)

(1)たにまち月いち古書即売会にて。ディックさんのところで。
 「たにまち」では毎度のようにディックさんのところの文庫を買っています。何かしら僕好みのがあって、なおかつ安いのです。 

(2)たにまち月いち古書即売会にて。古本横丁さんのところで。
 300円均一コーナーで拾いました。しばらくリルケを読む機会は回ってこないと思いますが、よさげな本だったので確保しておきました。

(3)天満橋のジュンク堂書店にて。
 新刊本は、できるだけ地元に近い本屋さんで買いたいと思っているのだけれど、組合で仕事をした帰りに、天満橋から電車に乗る前にジュンク堂に寄って、そこで新刊を見つけてしまうと、ついついその場で買ってしまいます。帰りの電車の中で読みたい、と思ってしまうから。

(4)某新古本屋にて。
 あちこちの某新古本屋で、ナボコフの『ロリータ』はわりとよく見かけるので、けっこうたくさん売れているのだと思うのですが、この本をきっかけにして他のナボコフ本に手を出すようになる人はあまりいないんでしょうか。他の本はなかなかブックオフもとい某新古本屋に流れてきませんね。

(5)寝屋川の某新古本屋にて。
 この本があったのを見た時は、ちょっと「へぇー」となりました。若干せどり気分で買いました。
 だいぶ昔に、講談社現代新書の『異常の構造』や『時間と自己』を読んだあとで、この本も読んでみたいなと思っていたのですが、結局こんにちまでこの本を手に取ることはなく。
 今回手に入れてちょっと見てみましたが、これを精読する元気は今の僕にはなさそうです。

(6)天満橋駅近くの花月書房さんにて。
 さる即売会で、小谷野敦の『現代文学論争』と臼井見の『近代文学論争』を並べて売っておりましたところ、『現代文学論争』だけ売れてしまいましたので、補充できたら補充したいなと思っていたところ、花月書房さんのところで見つけたので買わせていただきました。
 また並べて売りますので、どなたか買ってください。

(7)こちらはキンドル本。ゆえにアマゾンにて。
 わたくしアマゾンのプライム会員でございまして、このキンドル本などは、なんと無料で読むことができるのであります。小谷野先生の以前のキンドル本『鴎たちのヴァンクーヴァー』もまた、無料で読ませていただいております。
 この、「プライム会員は一月一冊無料で読める」というシステムは、どういう仕組みなのかしらん。僕が無料で読んでも、著作権者には、普通に買った時と同じだけのお金が入るようになっているのかな?
 タダで読んでいると、若干後ろめたい気持ちが。


 今週は「オーク200」の即売会もあって、そちらにもお邪魔したのですが、急いで組合に戻る必要があったために、ざっと見ることしかできなくて、オークの方では文庫2冊買うだけになってしまいました。
 もっとゆっくり見たかったなぁ。