店主の購書記:7月2週

  1. デイヴィッド・ロッジ『小説の技巧』(柴田元幸/斎藤兆史訳・白水社)
  2. リルケ『フィレンツェだより』(森有正訳・ちくま文庫)
  3. モーム『サミング・アップ』(行方昭夫訳・岩波文庫)
  4. エリオット『荒地』(岩崎宗治訳・岩波文庫)
  5. ドノーソ『三つのブルジョワ物語』(木村榮一訳・集英社文庫)
  6. 斎藤環『キャラクター精神分析』(ちくま文庫)
  7. 黒田龍之介『ポケットに外国語を』(ちくま文庫)

 (1)心斎橋のブックオフにて。
 心斎橋のブックオフには、だいぶ前からこの本があったのだけれど、安くもなかったのでずっとスルーしてきていたのが、このたびついに安くなっていたので購入。

(2)同じく心斎橋のブックオフにて。
  リルケが22、3歳の時に、ルー・サロメに宛てて書いた旅日記で、リルケの死後20年くらいしてから刊行されたものの、森有正による翻訳(仏訳からの重訳)。
 ルー・サロメはニーチェから求婚されたこともある女性で、ニーチェ書簡集にもルー・サロメ宛ての手紙が収録されています。読んでいるとだんだんつらくなってくるような手紙です。ニーチェの書簡は、ちくま学芸文庫のニーチェ全集別巻で手に入ります。

(3)同じく心斎橋のブックオフにて。
 モームの本は時々買ってちょっとずつ増やしています。商売柄売ることもあって、増えたり減ったりなんですが。買ってすぐ読むわけでもなく、いずれ「そういう気分」になったら集中して読もうかな、なんて思いつつ。

(4)同じく心斎橋のブックオフにて。
 最近何か読んでいる時に、エリオットの荒地の中の雨の使い方のことが書いてあって、それを確認しようかなと思い購入。

(5)古川橋のブックオフにて。
 この日はこの本を見つけて浮かれてしまい、この後、普段なら買わないだろうという本も買ってしまいました。

(6)同じく古川橋のブックオフにて。
『戦闘美少女の精神分析』の単行本が出た頃は、まだわりとゲームやアニメのことも分かっていたので、すぐ読んで「なるほどー」とか思っていたのだけれど、最近はその手のものにあまり親しんでいないので、この本を読んでももはやついていけないかもしれないと思いつつ購入。

(7)同じく古川橋のブックオフにて。
 最近長編小説をじっくり読んでいる時間もなかなか取れないので、もっぱら短い小説のほか、随筆のたぐいばかり読んでいて、しかも、随筆集一冊丸々読むわけではなく、自分が好きそうな話題の随筆だけを選んで読むということをしてます。
 この本は外国語に関するエッセイ集といったおもむきで、それだったらほとんどみんな興味を持てそうということで購入。


 今週は新刊本屋では本を買わず。古本屋もブックオフ二軒覗いたきり。

 古川橋のブックオフは、古本の業者市の帰りの道すがらにあるので毎週のように覗いてます。ここか、たまに守口の方のブックオフを。

 まだまだ新刊書店で手に入るような本を古本屋で買いましたって公言するのは、著者や出版や流通に関わっている方々なんかに申し訳ない気がして気が引けるのですが、当方貧乏なので許してください。

 貧乏ならそんなに本を買わなくてもいいんじゃないの? という気がしないでもないですが。

店主の購書記:7月1週

  1. 井上究一郎『水無瀬川』(筑摩書房)
  2. 石川淳『石川淳評論集』(ちくま文庫)
  3. 芳川泰久『書斎のトリコロール』(自由国民社)
  4. 『東欧SF傑作集(下)』(創元SF文庫)
  5. H.G.ウェルズ『解放された世界』(浜野輝訳・岩波文庫)
  6. 鈴木道彦『フランス文学者の誕生 マラルメへの旅』(筑摩書房)
  7. M.ミオー&J.ランジュ『娘たちの学校』(菅原孝雄訳・ペヨトル工房)
  8. モーム『劇場』(龍口直太朗訳・新潮文庫)

(1)難波はエキモの天牛堺書店にて。
 井上究一郎はプルースト『失われた時を求めて』の個人全訳を日本で一番最初にやったフランス文学者。『水無瀬川』は1994年に出た自選エッセー集。

(2)難波の望月書店にて。
 ちくま文庫の石川淳コレクションは短篇小説選、長篇小説選とこの評論選の三冊出ていますが、現在すべて絶版状態のようです。

(3)難波は古書センターの山羊ブックスにて。
 山羊ブックスさんでは欲しい本がいっぱいあったのだけれど、どれもこれも買うわけにいかず、三冊だけ。そのうちの一冊がこれ。
 芳川泰久さんは、最近新潮社からプルースト関連本二冊と、ボヴァリー夫人の新訳を立て続けに刊行されてました。僕はそのうち二冊は新刊で購入。
 この本は、その芳川さんが1994年に出した本で、たくさんのフランス小説(303 romans français d’aujourd’hui と書いてある)の書評集といった趣きの本。

(4)なかもずの天牛堺書店にて。
 ブックオフやなんかではあまり見ないなと思ったので買ってみた。案の定絶版本だった。
 上巻も一緒にあればよかったのだけれど、短篇集なのでさしあたり下巻だけでも。

(5)同じく天牛堺書店にて。
 岩波の赤帯は、持っていないものを見かけたらとにかく買う、というくらいの勢いで買ってます。
 これは持っていませんでした。

(6)泉ヶ丘の紀伊國屋書店にて。
 鈴木道彦さんは、『失われた時を求めて』の個人全訳を日本で二番目にやったフランス文学者。
 で、その鈴木道彦さんのお父さんが鈴木信太郎で、これはその鈴木信太郎の伝記です。
 今週唯一買った新刊本で、買った翌日に読了しました。
 フランス文学者の伝記ってどうもすごく好きみたい。辰野隆の伝記を読んだ時もすごく楽しくて、そのあと辰野隆随想全集を買って全部読んだりしました。
 当然今は鈴木信太郎全集が欲しくなっています。市に出てこないかな。

(7)千林のブックマートにて。
 17世紀フランスの好色文学。
 とくに好色文学好きというわけではないのだけれど、こういう時代のこういう小説はそんなにないと思うので、とりあえず確保。

(8)森小路のキーツ・アンド・カンパニーにて。
 千林には市があるため毎週通っているのだけれど、その隣の森小路には滅多に立ち寄らないので、この古本屋さんに来るのも、ものすごく久しぶり。
 最近モームの『人間の絆』を読んでいて面白かったのでこれも買ってみました。
『人間の絆』 、まだ読了してないんだけど。


 鈴木信太郎の伝記が面白かったです。
 鈴木家は戦前は相当の資産家で、鈴木信太郎は、自分で稼ぐお金だけではとても買えないようなフランスの本を尋常じゃないくらい買い集めていたそうです。
 さらに、何があっても焼けたりやなんかしないようにと、鉄筋コンクリートで書庫を建てて、蔵書はそこに保管して、おかげで、戦争で家は焼けたけれど書庫や蔵書は無事だったという。
 その書庫の建物は、最近豊島区に寄贈されたそうです。 蔵書の方は獨協大学に寄贈されているそうです。

 現代でも、ものすごい資産家の息子か資産家本人が文学に没頭して、金に糸目をつけずに本を集めている、というようなことはないのかなぁと夢想します。
 いたらお知り合いになりたい。

店主の購書記:2015年6月4週目

  1. チェーホフ『馬のような名字 チェーホフ傑作選』(浦雅春訳・河出文庫)
  2. 神品芳夫『新版リルケ研究』(小沢書店)
  3. ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ(下)』(岩波文庫)
  4. ナボコフ『ロリータ』(若島正訳・新潮文庫)
  5. 木村敏『自己・あいだ・時間』(ちくま学芸文庫)
  6. 小谷野敦『現代文学論争』(筑摩選書)
  7. 小谷野敦『お嬢様放浪記』(猫猫塾)

(1)たにまち月いち古書即売会にて。ディックさんのところで。
 「たにまち」では毎度のようにディックさんのところの文庫を買っています。何かしら僕好みのがあって、なおかつ安いのです。 

(2)たにまち月いち古書即売会にて。古本横丁さんのところで。
 300円均一コーナーで拾いました。しばらくリルケを読む機会は回ってこないと思いますが、よさげな本だったので確保しておきました。

(3)天満橋のジュンク堂書店にて。
 新刊本は、できるだけ地元に近い本屋さんで買いたいと思っているのだけれど、組合で仕事をした帰りに、天満橋から電車に乗る前にジュンク堂に寄って、そこで新刊を見つけてしまうと、ついついその場で買ってしまいます。帰りの電車の中で読みたい、と思ってしまうから。

(4)某新古本屋にて。
 あちこちの某新古本屋で、ナボコフの『ロリータ』はわりとよく見かけるので、けっこうたくさん売れているのだと思うのですが、この本をきっかけにして他のナボコフ本に手を出すようになる人はあまりいないんでしょうか。他の本はなかなかブックオフもとい某新古本屋に流れてきませんね。

(5)寝屋川の某新古本屋にて。
 この本があったのを見た時は、ちょっと「へぇー」となりました。若干せどり気分で買いました。
 だいぶ昔に、講談社現代新書の『異常の構造』や『時間と自己』を読んだあとで、この本も読んでみたいなと思っていたのですが、結局こんにちまでこの本を手に取ることはなく。
 今回手に入れてちょっと見てみましたが、これを精読する元気は今の僕にはなさそうです。

(6)天満橋駅近くの花月書房さんにて。
 さる即売会で、小谷野敦の『現代文学論争』と臼井見の『近代文学論争』を並べて売っておりましたところ、『現代文学論争』だけ売れてしまいましたので、補充できたら補充したいなと思っていたところ、花月書房さんのところで見つけたので買わせていただきました。
 また並べて売りますので、どなたか買ってください。

(7)こちらはキンドル本。ゆえにアマゾンにて。
 わたくしアマゾンのプライム会員でございまして、このキンドル本などは、なんと無料で読むことができるのであります。小谷野先生の以前のキンドル本『鴎たちのヴァンクーヴァー』もまた、無料で読ませていただいております。
 この、「プライム会員は一月一冊無料で読める」というシステムは、どういう仕組みなのかしらん。僕が無料で読んでも、著作権者には、普通に買った時と同じだけのお金が入るようになっているのかな?
 タダで読んでいると、若干後ろめたい気持ちが。


 今週は「オーク200」の即売会もあって、そちらにもお邪魔したのですが、急いで組合に戻る必要があったために、ざっと見ることしかできなくて、オークの方では文庫2冊買うだけになってしまいました。
 もっとゆっくり見たかったなぁ。

店主の購書記:2015年6月3週目

9784122001367

  1. ゾラ『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家—ゾラ傑作短篇集』(國分俊宏訳・光文社古典新訳文庫)
  2. ゾラ『テレーズ・ラカン』(小林正訳・岩波文庫)
  3. エラスムス『痴愚神礼讃』(沓掛良彦訳・中公文庫)
  4. クノー『地下鉄のザジ』(生田耕作訳・中公文庫)
  5. ドン・デリーロ『コズモポリス』(上岡伸雄訳・新潮文庫)
  6. 大友克洋『ショート・ピース』(アクション・コミックス)

(1)天満橋のジュンク堂書店にて。帯の惹句は「“短篇作家”ゾラの魅力発見!!—奇抜な設定と意外な結末—『居酒屋』『ナナ』だけじゃない」。
 光文社古典新訳文庫の今月の新刊。
 最近の古典新訳文庫はちょっと高いと思う。 あまり数が売れなくなってきて高くせざるをえなくなってきたのかなと憶測するのですが、高くなるとますます売れなくなり、そのうちこのレーベルがなくなっちゃうんじゃないかと心配になります。 

(2)古本屋にて。(1)を買った数日後に見かけたので、ゾラ繋がりで買っておこうと。

(3)古本屋にて。わりと最近出た本なので、古本屋で見つけられると思っていなかったので、ちょっと掘り出し物を見つけた気分でした。
 この文庫は訳者あとがきも面白いです。ある先行訳をけちょんけちょんに貶してます。あんまりひどいから自分が翻訳を出さねばと思ったということです。

(4)古本屋にて。ジャケットにカトリーヌ・ドモンジョの写真が使われている版。『地下鉄のザジ』は映画も好きだということもあって、このジャケットは好き。

(5)古本屋にて。この文庫のジャケットも映画のスチール写真を使っているのだけれど、これは好きじゃない。というか、映画のスチール写真を使ったジャケットはたいてい好きじゃない。上のザジは例外中の例外。
 最近、都甲幸治さんの『偽アメリカ文学の誕生』 を読んで、ドン・デリーロも読んでみようかなと思っていたので買いました。

(6)古本屋にて。どこの古本屋ででも、漫画はあまり熱心に見ないのですが、大友克洋と髙野文子の単行本だけは、「ないかなー」とちらちら探してみることがあります。なかなかないんですが。今週久しぶりに見つけて確保しました。 


 今週は他にも十数冊買いました。もちろん全部は読めません。
 この、読み切れないのに買うという癖は、古本屋になるはるか前からのもので、 古本屋だからたくさん買っているというわけではないんです。

 もうちょっと合理的な生き方をしようと思えば、本は読む分だけ買って、再読しない本は売るなりして処分するのがいいと思います。それは分かっているんですが、そうしようと思ったことはあまりないし、そもそも合理的な生き方をしようと思いがちな人は、古典文学とかあまり読まないんじゃないかなぁという気がします。 

 つまり、古典文学とかに惹きつけられがちな僕は、合理的に生きようとは、多分思っていないんでしょう。

 

 自分はけっこう合理的な判断をする人間だと思っていたんだけど、そうでもなかったのかぁ。