最近書いている散文について:その動機と方法のこと

最近イベントで配布しているペーパー

 最近、イベントごとにチラシを作って配布するということをはじめました。一箱古本市とか同人誌即売会みたいなイベントでは、その日だけ配るペーパーを作るというような文化があったかと思うんです。そういうのに以前から憧れがあって、「やりたいな」ということはずっと思ってました。
 何度かチャレンジしてみたことはあったんですが、だいたい古本即売会の直前というのは異常にバタバタしていて、ちょっと腰を落ち着けてペーパーのために文章を考えて書いてみる、なんていうことをする余裕があることはめったになかったんです。
 それなので、たまたま余裕のあるときは出せたけど、そういう機会はめったにないということで、最近ではもう試みようとさえしてませんでした。
 このたび、そんなに余裕があったわけでもないのに、天神さんの古本まつり、阪神古書フェアと、続けてペーパーを出せたのは、書く動機を与えられたことと、書く方法を思いついたことという、二つのことがたまたま重なったからでした。

 まず動機についてですが、これは、これまでに出した二つのペーパーのどちらでも触れていたことですが、ある人に「外国文学のおすすめ」を聞かれた、ということがじっさいにあったということです。
 聞かれた瞬間に、「じゃああれとこれとそれなんかをおすすめします」みたいに言えたらよかったんですが、そういう決断力のないぼくは、悩んだ末に「それ文章にして書いてみるので、書けたら読んでください」というような答えをしたのでした。
 つまり、おすすめ外国文学のお話を書くという約束を、ある人と交わしたのでした。これが動機です。
 この問いにまっすぐ答える準備も一方ではしてます。まっすぐ答えるというのは、おすすめ小説のリストを作って、どうしてそういうリストになったのかの選評(?)みたいなものを書く、というようなことです。これはこれでいずれ実現させるつもりですが、まあまあ時間がかかりそうなので、のんびり待っていてもらえたらなと思っています。

 次の問題は書く方法でした。
 ペーパーを作るのにそんなに時間はかけられないので、いろいろ思い浮かぶ方法のうち、ほとんどのものは採用できないことはすぐに分かりました。
 たとえばおすすめの小説をがっつり紹介する、書評のようなものをやるとしたら、まずその小説を再読するとかいうところから始めないといけないわけで、そこまでの時間はかけられないよ、というようなこととか。
 それで思いついたというか、「こういう書き方でどうだろう?」と直感したのが、次のような書き方でした。
 テーマはぼんやりと外国文学のこととする。書いているうちに外国文学の話になればいいし、ならなかったらそれはそれで仕方ない、くらいにぼんやりとさせておく。
 そしてまず、なんでもいいから一つのフレーズを書いてみる。そのフレーズで続きが書けそうになかったら別のフレーズを書く。いくつか書いているうちに、このフレーズを採用しようと決めたら、そこからはその先をとにかくずるずると書き続けるようにする。
 最初のフレーズから、できるだけ飛躍を少なくして文章を書き継ぐようにする。一つの文とその次の文の間の飛躍はできるだけ少なくするけれど、書き続けるうちにできるだけ「遠くに行こう」ということは考える。つまり書き出しのフレーズは、べつにその文章全体の主題でもないし、中心的なトピックというわけでもないと思っておく。
 そうやってぐずぐずとした書き方で書き続けて、紙面が尽きたらそこですっぱり終わる。文章全体のまとめをするとか、振り返るとかしなくてもいい。うまくスタートの話題に回帰してきれいに終われることがあれば、それはそれでいいけど、そうならなくても気にしない。
 そして最後に、この書き方用の「文体を作る」ということを考えました。

 われながらなかなかひどい書き方だと思います。人に読んでもらうための文章の書き方ではないと思います。
 世の中によくある「文章の書き方」の方法の裏を行くようなやり方かなと思います。
 こんな書き方をしていたら、読んでくれる人はほとんどいなくなると思います。みんなに読んでもらいたいのであれば、もうちょっと文章作法を守った方がいいんじゃないかと、思わないでもないんですが……。
 でも、ある一人の人間が発する言葉っていうのは、べつに「みんな」に届く必要はぜんぜんないと思うんです。
 いまの世の中には、というか、多分いつの世の中でも、「みんな」に届けようとすることで、多少のポピュラリティーを得るのと引き換えに、いろんなことを失っている表現っていうのが、すごくあるんじゃないかなと思っていて、その裏を行くっていうやり方も、まあやってみてもいいんじゃないかなと。
 ポピュラリティーを狙うことで失ってしまうものの方を取りに行く(ポピュラリティーを犠牲にして)という「書き方」を、現在進行形で模索中です。

 結果、ただ読みにくい文章を量産するだけになるかもしれませんが、たくさん書くことでなにか大切なものを掬い取れたらいいなと思ってますので、「寸心堂のやることだったら、ちょっと付き合ってやろうか」という心の広いかたがいらっしゃったら、ぜひ今後とも、新しいチラシを持っていって、たまに読んでもらえたら嬉しいです。

 たにまち月いち古書即売会も、来てね!

今年の抱負はOLL……

あけましておめでとうございます。

新年なので、今年の抱負を語りたいと思います。

寸心2号の今年の抱負は「OLLを全部回せるようになる」ことです。

 < OLLって何やねん!

OLLというのは、ルービックキューブを六面揃える解法のうちの一つであるCFOPの三段階目のステップの事です。

CFOPというのは、Cがクロス、FがF2L(First 2 Layer)、OがOLL(Orientation of Last Layer)、PがPLL(Permutation of Last Layer)という4つの段階から成ります。

詳細はCube VoyageさんのHPをご参照ください。

解法「CFOP」とは?
https://cubevoyage.net/how-to-solve/advanced/what-is-cfop/

昨年はPLLを覚えました。一度覚えたけれど、二ヶ月くらいルービックキューブに触っていないと、ほとんど忘れてしまっていたので、もう一度覚えなおしました。その後、再び忘れないようにと、毎日一回はPLLを全部回すということをしてます。

昨年中にPLLを覚えたので、今年はOLLにチャレンジしようと思ってます。記憶力も悪ければ根気もないので、覚えきれるのか分かりませんが、一応今年の抱負はこれにしよう! と思い立ちました。

仕事上の抱負については野暮なので語りません。

寸心堂は古本屋でございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。

文庫レーベル別思い出の一冊(中公文庫編):レーモン・クノー『地下鉄のザジ』


「文庫レーベル別思い出の一冊」を久しぶりに書こうと思い、これまでに書いたものを見返してみて思ったのは、「仏文ばっかりやん!」ということでした。

今度も仏文でレーモン・クノー『地下鉄のザジ』、生田耕作訳。

澁澤龍彦きっかけでフランスの翻訳物を読み始めたので、必然的に生田耕作にも行き当たりました。

澁澤龍彦とか生田耕作って、今思うと若い人に受けそうな感じがする(中二病感ある)し、それで若い時の自分が随分傾倒していたのだろうと思うのだけれど、いまどきの若い人はどうなんでしょう? 澁澤龍彦とか生田耕作とかその翻訳小説とか、読んでるんでしょうか?

『地下鉄のザジ』は映画にもなっていて、僕はこの映画もすごく好きでした。

まだレンタルビデオの時代。DVDじゃなくて、ビデオテープだった時代に借りて観たのが初めてで、その後DVDを買いました。

そのDVDはいつかの「たにまち月いち古書即売会」で売ってしまいました。そうやって思い入れのある本やDVDとお別れをしている毎日です。

上の写真のフォリオのペーパーバックも、中公文庫も、ジャケットの写真は映画からですね。

文庫のジャケットが、映画化した時にその映画の写真のジャケットになることが時々ありますが、そういうのはたいてい好きじゃないけれど、『地下鉄のザジ』のこのジャケットは、なんか許せる。むしろ好き。

それはもう、カトリーヌ・ドモンジョが好きだから。

『地下鉄のザジ』のカトリーヌ・ドモンジョか『ペーパー・ムーン』のテイタム・オニールか、どっちか。ってくらい好き。

最後に、生田耕作のことをあまり知らない人に向けて一言、二言。

生田耕作の翻訳の中で一番ポップなのがこの『地下鉄のザジ』で、これならわりと誰にでもおすすめできますが、生田耕作のこれ以外の翻訳は、あまりお子様にはおすすめできないようなものばかりです。

その辺がまあ厨二心をくすぐるところなわけで、あえてそういうところにこれから踏み込んでみたい! という人には、マンディアルグの短編集なんかをおすすめします。

マンディアルグの短編集は白水Uブックスで出てますが、最近はどうも絶版状態のようなので、どうぞ古本屋か古本即売会に足をお運び下さい。

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第8回水の都の古本展


第8回水の都の古本展、いよいよ始まりました。

2月21日(火)10時から、2月24日(金)17時まで。

最終日以外は毎日20時までやってます。

大阪市中央公会堂の2階、第6・7・8会議室にて。

以下、搬入日設営直後の写真です。コメントをつけて紹介していきます。

こんな感じです。あらかた外国文学関係、一部哲学・思想、上の写真では奥の方に行くと、翻訳じゃない本がちらほらと。

あと、お菓子関係の大型本がちょっと並んでます。イルプルの弓田亨さんの本とか。

余談ですが、東京の市に行った時、代官山のTSUTAYAを覗きに行ったその足で、イルプルシュルラセーヌにも行ってきました。スイーツ男子(中年)の寸心堂です。

いつもの猫ちゃんがいて、ナボコフ・コーナーなど。

これも思い出したついでに余談ですが、上の写真の右上にちらりと写っている『作家の聖別』という本、代官山のTSUTAYAで買いました。

新刊で買って古本として売ってるので、まあぜんぜん儲からないことったら。

文庫コーナーもあります。

が、谷町月一から(もっと言うと年末の阪神百貨店の催事から)あまり増えてません。

増えてませんけど、うちはけっこうロングセラーな本を扱っているつもりなので、息長く売っていきます。

本が変わらなくても、買い手の興味が変われば、以前買うつもりにならなかった本でも買う気になったりしますよね? というわけで。

ちょっとだけ洋書のコーナー。

左の方にBD(フランスの漫画)が少しあります。

一番手前はバスティアン・ヴィヴェス。最近何冊か翻訳されてますが、写真で見えるのは邦訳されていない本。翻訳が出ている『ポリーナ』もあります。

奥にニコラ・ド・クレシーの本が2冊あるんですが、なんとこれらについては、邦訳本が梁山伯さんのところで買えます。たまたまカブりました。原書と訳書、まとめて買うチャンスです。ちなみに『氷河期』と『天空のビバンドム』です。

これは梁山伯さんのコーナーの本。

バベルの図書館のシリーズがまとめてどばっと。ああ、僕が欲しいわ!

というような感じで、お馬さんも待ってますので、どうぞ水の都の古本展に足をお運び下さいませ。

よろしくお願いします。

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2月の即売会準備中:岩波少年文庫創刊40年記念特装版


昨年、「たにまち月いち古書即売会:2016年11月」という記事で、初期岩波少年文庫の復刻版を紹介しました。

今度は岩波少年文庫創刊40年記念の特装版です。これも復刻版と同じく全30巻あります。

今度のは、珍しい(手に入りにくい)タイトルのものはほとんどありません。なので、復刻版の時より安い値付けをしてます。

今回ももちろんバラ売りするので、懐かしのタイトルとか、どうぞ手に取ってみてください。

なかなかに美しい本なので、手に取ってみると欲しくなること請け合いです。

僕もどれか一冊記念に取っておこうかなぁ。僕は、一冊ならやっぱり、『ホビットの冒険』かな?

たにまち月いち古書即売会は、大阪古書会館にて、2月17日(金)から。

水の都の古本展は、大阪市中央公会堂にて、2月21日(火)から。

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